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2007年02月10日

「生かされて。」

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生かされて。 イマキュレー・イリバギザ著 スティーヴ・アーウィン著  堤江実訳 PHP出版

ルワンダの虐殺・ジェノサイドについては、映画「ホテルルワンダ」を観て改めて、衝撃を受けた。関連の本も多くでていていろんな角度で、語られていると思う。衝撃なのは、この現実にあった地獄が、ほんの13年前、つまり震災の前年にあったということだ。

「生かされて」は、ルワンダで、3ヶ月で100万人が虐殺されたツチ族の生き残りの女性の真実の日記である。

この本は、イマキュレー自身が、狭いトイレに7人の女性と隠れて、何度も死の危険にさらされながらも生き延びたということも驚きだけれど、その最悪の状況を、強い信念をもって、信仰をつらぬき神様と対話しつづけた姿も驚きだ。この虐殺の悲惨さは、殺人を犯している側が近所の顔見知りであったり、幼なじみであったり、学校の教師であったり、ごく身近な人間たちが、ツチ族であるというだけの理由で、彼女の家族の命も奪ってしまう。死体が山のようになっている様は、「ホテルルワンダ」をみているので、ああいった状態だったのだろうと想像する。ほんとに臭いがないから、映像を見ることがなんとかできたが・・・・想像を絶する。

イマキュレーは、本当に信仰が熱い。この本が、キリスト教徒にとって勇気付けられる一冊になることは納得がいく。彼女は、結局殺人者たちを「許す」ことによって、自分を癒すことの初めの一歩を踏み出すのだ。
憎しみが連鎖する紛争。戦争の当事者が本来の自らの宗教や信念の本質に戻るとき、「許し」は生まれないのだろうか。彼女は、最悪の状況でも祈りつづける。
「祈り」は、「ポジティブシンキング」であると彼女は書いている。わたしも、そう思う。究極のプラス思考と思っていた。けれど、あんな状況でもそうあれるというのは、並みの精神の持ち主ではないとは思うけど。

私は、信仰はもっていないけれど、「許し」と「究極のプラス思考」は、心がけたいと感じる。

ルワンダ関連の映画もやってくる。大阪は、上映時期が未定となっているが、「テアトル梅田」で公開されるようだ。タイトルは「ルワンダの涙」ルワンダの虐殺事件を海外青年協力隊の青年の立場から見たものらしい。世界が国連が見捨てたルワンダに対する贖罪の気持ちをこめたものというような。

なぜ人は、このような悲惨な物語に心惹かれるのだろう?人は、地獄を生き抜いた人に「癒し」を観るのだろうか?彼女の「許し」に触れたいからだろうか?
この本で、信仰のあるなしに関わらず、イマキュレーという女性にであってほしいと思う。

映画「ホテルルワンダ」のエントリーはコチラ

投稿者 pianocraft : 2007年02月10日 01:09

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コメント

こんにちは。この本は読んでみたいなと思っていました。信仰についてどう書かれているのか,pianocraftさんのおはなしからなおさら興味深いです。でも読みたい本がありすぎて・・・欲が深いわたしです。ルワンダの件については,別の本も出ていて,買ってあるのですがそのままです。時間がたつのが早いですね。

投稿者 KATEK : 2007年02月10日 10:42

KATEKさんは、本当にたくさん本を読んでいらっしゃるから、多くの言葉から、それこそ「癒し」も「共感」も得ていらっしゃると思うのですが、虐殺や紛争に私自身がなぜひきつけられていくのかは不思議でした。
おそらく、強烈にひどい状況でも本当は弱い人間が、憎悪ではなく解決の道を歩んでいけるのではないか?という非暴力・非戦の思いを求めてるんでしょうね。

彼女の状況は悲惨でしたが、虐殺の只中の話なのに、読後生々しく苦しい感じは受けませんでした。

投稿者 pianocraft : 2007年02月10日 14:45

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