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2007年08月09日

ピアノの数奇な運命

今日は、ピアノのコンサートをはしごした。
全く違う2つのコンサート一つ目は、河野康弘さんの「ワッハッハジャズコンサート」
子供向けのコンサートにおじゃました。いつも弾かれていない眠っているピアノを目覚めさせようと、全国のいろんな場所で、いろんなピアノを弾き、廃棄されるピアノを再生して寄付したりする活動をされている。河野さんの演奏は、ジャズの中でも「フリージャズ」といわれるスタイルだ。だが、子供たちとうたったり、ジャムしたりと元気よく、ピアノの弦をじかにはじいたり、ひじ打ちしたり、拳骨したりして表現していた。

調律師としては、目覚めるというよりも・・・痛みがきになるところです。
今は弾かれていないピアノが確かに日本にはうんとある。したがって調律もされてない、何も手をいれてもらってないカワイそうなピアノもうんとある。そういうピアノが、ひとりのオッサンによって、強烈な弦振動を与えられて、揺り動かされる。そういう人生を歩むピアノもあるんだな。再生され、よそで大切にされるならば、それは幸せなことだけど。

二つ目のコンサートは、エントリーにあげている。「被爆ピアノコンサート」
こちらは、やはり古いピアノを無償で再生し寄付するという活動をしている矢川さんという調律師が、ヒロシマの爆心地1.8メートルの民家で、被爆した75年前のピアノをなるべく新部品を使用せず再生し、全国に運んでコンサートをひらいているコンサートだ。

被爆ピアノは、3台所有されているそうだが、本日使用したものは、松谷みよこさんの手によって絵本になったピアノだ。75年前の75鍵のヤマハアップライトピアノ。
コンサートの舞台上に、アップライトピアノが置かれることは珍しい。立派なコンサートグランドではなく、そこには、つやが少し消えた、ガラスの破片がいっぱいささったというピアノがあった。まわりには、沢山の千羽鶴が飾られている。
それだけで、よくここまでやってきて音をだしてくれているね。と感銘する。

音楽ができない時代、状況というのが戦時だ。文化や芸術が否定されて、個人の自由が制限される。そんな時代が二度と来ないように、ヒロシマのピアノは歌い続ける。
生き残ったピアノは、使命をもっている。人と一緒に旅をし、全国を飛び回る。
あの日閃光を浴びたピアノが、灼熱の光線によって金属がとかされず、木が燃えず、奇跡的に音をならしつづける。このピアノには、まだ人生が続く。

ヒバクシャが訴えつづけることを助けるために、その運命はまだ続いている。

それぞれ違った運命を与えられたピアノ。人と友人のようなピアノ。

投稿者 pianocraft : 2007年08月09日 00:06

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コメント

こんばんは。昨日テレビのニュースで,原爆ピアノを弾く子ども達が紹介されていました。どういう思いでみんなが弾いたのか・・・ものを介して伝わることもたくさんありそうです。そしてこうして音楽を自由に演奏したり鑑賞したりできる世の中が続いてほしいものです。

投稿者 KATEK : 2007年08月09日 22:50

KATEKさん。こんにちは。
芸術を楽しむことは、今は当たり前のことですが、そういった当たり前の生活を奪うのが戦争の惨禍です。

しかし、アメリカでは日常にそれほど大きな不便があったかどうかはわかりません。原爆を投下する側、される側のギャップがこれほどまでに大きいのがいまだに悲しいです。
「ヒロシマナガサキ」が多くの世界の人に見られることを望みます。

投稿者 pianocraft : 2007年08月11日 13:42

お目覚めコンサートをしています河野康弘です。
お目覚めの曲が強烈で気になさっていたんですね。
いたむほどの演奏はしないようにしています。
演奏をはじめた頃は弦が切れるまで演奏していました。
でも強く叩いてもピアノはならないので、抑えて演奏していました。
誤解されているようで辛いです。
被爆ピアノの件は1997年僕がピアノを探して矢川さんに修理をお願いしてコンサートを始めました。
http://earthharmony21.com/hiroshima/hibakupiano.html
に掲載しています。
不要ピアノの寄贈も矢川さんが私の活動に賛同して協力してくださいました。
もちろん運搬費用、修理費用はお支払いしました。
毎日のコンサートで集めた募金からです。
矢川さんは仕事でピアノを修理してらっしゃいます。
無償ではありません。
もちろん、それが悪いことではありません。
その後もご自分で募金を集め修理費用にあてていらっしゃるようです。
だから彼のお仕事です。
ただ皆さんに無償でやっていると話していらっしゃるようなので訂正させていただきたきました。
僕のコンサートと被爆ピアノのコンサートを同時に聴かれたなんて偶然ですね。
pianocraftさんとゆっくりお話しができたらよかったですね。
また大阪へも行きたいと思います。
お話しができる日を楽しみにしてます!

投稿者 河野康弘 : 2008年05月21日 05:27

河野さん。お久し振りです。
「オッサン」と書いてしまって失礼しましたが・・大阪ではかわいいという意味もこめて愛称でもあります。

おっしゃるように、ピアノは強く叩いても限界があります。
山下洋輔さんが、ばんばん弦を切ってますが(最近は燃やしたりして私は怒りを感じます。)それも、道具としてのピアノでしかないのかしらと思って悲しいですが。

河野さんの活動は面白い発想だと思います。ただ、ピアノを知ってもらうならば、私は違うアプローチをするという事は確かです。技術者という立場の違いだからでしょうか、本当に細部までピアノのパーツはより良い音を出す働きをしてくれてます。

コンサートのジャムセッションは楽しかったですよ。子供たちにジャムを感じてもらうのはとてもいいと思いました。

また、矢川さんとの関わりは存じておりませんでした。
被爆ピアノを見出されたのが河野さんであるということもこのピアノの生きる道を与えたという意味でとても重要な働きをされたのですね。素晴らしいと思います。そのピアノを修理依頼されたといのもね。
ただ、この被爆コンサートは少し気になる点がありました。
矢川さんのPAのこだわりかも知れませんが・・。

一度、眠っていたピアノをお目覚めピアノされた持ち主に今度は修理してあげてくださいねとお声かけいただけませんか?本当に出したい音を出させてあげるために。これからも、全国でご活躍くださいね。

投稿者 pianocraft : 2008年05月21日 23:44

山下さんが全国のホールでピアノを弾いた事で昔はジャズにピアノを貸してくれないホールもありました。残念です。
またピアノが寿命だと燃やしてしまったのは、悲しくなりました。
まだまだ使えると思いますからね。
ピアノお目覚めコンサートして下さる御家庭には調律、調整をお願いしています。
秋にホームコンサートを企画してくさるご家庭でも長らく調律していなかったのでコンサートをすることになり、早速調律をしてくださいましたよ(^^)
学校関係には毎月1回は調律していただきたい、と話しをします。
音楽教室のピアノが、けっこうひどい状態の物が多いですからね。
でも、予算が無い、との話になります。
予算が無いのではなく出す気持ちが無いと思います。
日本は世界の経済大国です。
お金の使うところを間違っているように思います。
ちょっと悲しい現実ですね。
ホールはいっぱい作りましたがコンサートをする予算が無い市町村も多いですね。
ホールでもピアノが眠ってます。
そんなピアノも弾きたいと思います。

投稿者 河野康弘 : 2008年05月22日 12:28

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