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2007年03月13日

人間は捨てたものか?捨てたものじゃないか?どっち

やっと観て来た。「善き人のためのソナタ」「グァンタナモ 僕達が見た真実
実は、2ヶ所の劇場をはしごしてみた。

よくも、まあ、人の良心と悪意とが両方際立った映画を選んだものだと・・・自分でも苦笑している。

「グアンタナモ 僕達の見た真実」は、アメリカが今現在もキューバのグアンタナモに500人も収容していて、起訴された人は10人という、ばかげた「テロリスト収容所」に偶然放り込まれることになってしまった、3人のイギリスの若者の実話に基づく映画だった。

ドキュメンタリーのような描写で、外からは見えない収容所、尋問、暴力を知らせてくれる。「テロリストに決め付けられる」た人々が米軍によってどれだけ捕らえられたのであろうか?アルグレイブの写真にあったような、感じとは少し違ったが、誰でも一度疑われたら逃れられないという恐怖に救われない気分となった。拷問は、強烈な轟音のロックがならされて、ストロボライトが点滅する部屋で足を縛られて、何時間も置かれる。耳元では、尋問が繰り返されたり、数多く。ラムズフェルドがうそぶく「人道的な取り扱い」が、この有様だ。

けれど、この20そこそこの若者たちは、なかなか意思が強かった。よくやった。けれど、彼らはイギリス国籍であったから、今、帰れたのだろうなと思う。多くの収容所の人たちは、イギリスでのアリバイを持っているはずがないから。

こうして、救いようのない、腐った米軍を見て、思った。米軍という組織、アメリカという国は、救いがたいけれど、人として完全な悪などなく、戦争をきっかけにして「人らしい感情」を封印してしまってる。善と悪の2つに、人は色分けされるものではないはずだ・・・と、「善き人のためのソナタ」を見てからみた、この映画。人として。兵士をやめて、もういちど生きて欲しいと思った。

そして、美しかった映画「善き人のためのソナタ」

1989年にベルリンの壁は崩壊した。今、高校生の子供たちが生まれたころだ。
その少し前の東ドイツを舞台に、この映画は、敵対する関係にある人間たちの中から生まれた、人間らしい「情」「愛」を描いた。実にしっとりと、心に染みる映画だった。

劇作家と女優の恋人の同棲するアパートを盗聴するシュタージ(秘密警察)。西側に情報を流さないか監視している。国家の社会主義にそわない演劇は、抹殺され、作家は職をうばわれる。
そういう意味では、主人公のドライマンは、東側と折り合いをつけた形で、演劇を創作していた。けれど、職を追われた演出家の友人が自殺をはかったことで、東側に反発をつよめる。そうして、西側に秘密裏に東側の自殺率の高さなどをレポートした記事を送ることになる。

これを監視していた、シュタージのヴィースラーがいい。本来の任務から離れて、盗聴するに従い、親しみを感じてしまう。ブレヒトをこっそり、書斎から持ち出して読んだり、タイトルになっている「善き人のためのソナタ」を演奏を聴いて、盗聴しながら涙を流す。

敵対していながらも、彼らを結局守る、ヴィースラー。しかし、その姿は、盗聴されている本人に知られることはなかった。影で彼らの危機を救った。その後、ベルリンの壁は崩壊。
ドライマンは、後に盗聴の事実を知り、シュタージ資料館(ここはすごい!調べ上げられた個人の情報の資料館で、こうして人はリストにされてしまうのかと思う。)を訪れる。自分の資料を請求すると、山積みされた資料がでてきた。それが、ヴィースラーの報告書であり、自分たちが、誰かに盗聴されていたが、救われたということを知る。

この映画では、冷たく、人間味のない「尋問官」が人間の良心で動いていく、変貌していく様を描いているのだが、国の政治が狂っていても、人は良心をもういちど取り戻すことができる。そのような、救いのある「捨てたもんじゃない」派のストーリー。
観ていて美しく、シュタージのヴィースラーのくそまじめさが、良いほうにも悪いほうにもころぶ。はかない人のこころ、弱さも感じた。けれど、ラストにヴィースラー自身が救われるところがとても素晴らしい。

投稿者 pianocraft : 2007年03月13日 23:19

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『善き人のためのソナタ』フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督。梅田シ [続きを読む]

トラックバック時刻: 2007年03月14日 20:38

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 今回もいつもお世話になっているKさんの推薦で、善き人のためのソナタを見てきました。正直言うと眠くなりそうな予感がしたので、前の日はゆっくり眠って備えまし... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2007年04月08日 14:27

コメント

こんばんは。はしごでしたか。
私も今日は半日の休み、映画に行くと決めていましたが観たいものがいっぱいあり随分迷いました。結局『ルワンダの涙』にしました。
>人らしい感情」を封印
ルワンダでもそうでした。
本当に「人」というのは不思議な生き物です。

「善き人のためのソナタ」は監視国家を描きながらも美しい映画に仕上がっていましたね。サントラも買ってしまいました。
人はやっぱり善、だと信じたいですが・・・。

投稿者 りん : 2007年03月14日 21:00

おふたりとも,『善き人のためのソナタ』ごらんになったのですね。いいなぁ。DVDになってくれることを祈っています。わたしは「すてたもんじゃない派」の映画をたくさんみたいです。『トンマッコル・・・』でしたっけ。そろそろDVDになるとのこと。早くみたいです。本も出ているし・・・

投稿者 KATEK : 2007年03月14日 22:16

りんさん、こんにちは。
人は、善であるという前提に立っている。とは思います。
けれど、ゆれるのが弱さです。個々の事柄に自分がどう対処しているかを考えると、反省材料も多く。

でもね。あっちからこっちへ、変わることもできると思うんですよね。

投稿者 pianocraft : 2007年03月14日 22:17

うわKATEKさん、ほぼ同時送信でした。

「トンマッコル」もう発売になっているようです。Amazonで確認しました。わたしも、注文しなくちゃね。

「善き人のためのソナタ」もきっとDVDになると思いますよ。映画は本当に、時間と勢いがないといけません。

投稿者 pianocraft : 2007年03月14日 22:26

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